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膝・足の疾患

半月板損傷(meniscus injury)

症状

半月板は膝関節の大腿骨と脛骨の間にある軟骨の板で内側と外側で2枚ありクッションの役割を果たしています。
膝の曲げ伸ばしに痛みや引っかかりを感じることもあります。膝に水が溜まることもありロッキングという状態(膝が伸ばせなくなる)になることもあります。これは断裂した半月板の一部が顆間窩に挟み込まれるのが原因となることが多いです(かんとん症状)。
体重が負荷した状態で膝関節に異常な回旋力が加わると半月板が損傷を受けます。若年者の場合スポーツ中に膝を捻って損傷します。中高年の場合加齢により傷つきやすくなっている半月板に無理な動作や立ち上がり動作時に軽微な外力が加わって損傷する場合があります。

診断

MRI検査や徒手検査などで診断します。

治療

保存療法:投薬やリハビリで症状が改善する場合があります
手術療法:切除術や縫合術があります

内側側副靭帯(MCL)損傷(injury of the medial collateral ligament)

症状

膝を支点に下腿を外側に動かすと激痛を訴え、その際動揺が見られることがあります(外反動揺性)。
膝の内側に圧痛があります。
重症例だとほとんどの場合十字靭帯損傷を合併しており大量の関節内出血を認めます。

原因

膝の靭帯損傷では最も頻度が高く、膝に大きな外反力が加わって発生します。
コンタクトスポーツやスキーなどで受傷することが多いです。

治療

単独損傷であれば外反動揺性は小さいので装具装着などによる保存療法を選択します。6週間程度でスポーツ復帰が可能となります。
十字靭帯損傷を合併したものでは手術療法を行うことが必要となります。
 

後十字靭帯(PCL)損傷(injury of the posterior cruciate ligament)

バイク事故やスポーツ損傷にて膝から転倒し、膝を約90度曲げた状態で前方から脛の上端に外力を受けて受傷する場合が多いです。
乗用車の追突事故で膝を曲げて座った状態でダッシュボードなどに脛を打撲して受傷することもあります。(ダッシュボード損傷)

症状

膝蓋骨の下方に打撲による皮膚の損傷を認める場合があります。関節内出血による腫れがあります。仰向けに寝て膝を立てると下腿の下方への落ち込みが認められます。(サギング兆候)
スポーツ活動や階段昇降にて不安定感を覚えることがあります。

治療

多くの場合スポーツ復帰など可能なので大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法を第一選択とします。日常動作に不自由を感じている時には再建術を行うこともあります。

前十字靭帯損傷(injury of the anterior cruciate ligament)

原因

バレーボールやバスケットボール、サッカーなどのスポーツでジャンプの着地に失敗、方向転換、転倒などで強く膝を捻ると受傷しやすいです。

症状

受傷直後は激痛があり動けないことがあります。
時間が経つにつれて関節の中に血液が溜まり膝が腫れてきます。
時間が経過したものだとスポーツ活動時などに膝くずれ現象を起こすことが多くなります。
これを放置して膝崩れ現象を繰り返していると軟骨や半月板を損傷し膝の老化-変形性膝関節症へと移行していきます。

診断

MRIにて断裂の形態を把握して半月板断裂などの合併症の有無を評価します。

治療

あまりスポーツ活動を望まない中高年者には装具の装着や筋力強化を中心とした保存療法で経過を見ます。
一方スポーツ活動を望む方には腫れなどの急性期症状がおさまるのを待ってから手術療法を行います。手術は自分の組織(膝蓋腱やハムストリングス)を使った靭帯再建術を行うことが多いです。
術後のリハビリテーションは通常半年から1年かかります。装具を用いながら早期から筋力強化や関節可動域訓練を行っていきます。3ヶ月後くらいからジョギングが許可されることがあります。その後段階的に負荷が強く複雑な運動の練習をしていくことになります。

予防

ACL損傷は非接触型の受傷機転が多いため予防プログラムにより発生率を低下させる事が可能です。

  • バランス
  • 筋力
  • 片足スクワット
  • ロシアンハムストリングス
  • ランジウォーク
  • ジャンプ
    両足垂直跳び-着地
    片足前方跳び-停止

膝靭帯損傷

スポーツ外傷や交通事故などで膝関節の正常可動域を超えた動きを強制されるとその外力の方向に応じてさまざまな靭帯損傷を起こします。
受傷直後から急性期には膝の痛みと可動域制限があります。しばらくして血腫が溜まり歩きづらくなってきます。
急性期を過ぎると痛み・腫れ・可動域は良くなってきます。しかし損傷部位によっては膝の不安定感が目立ってくることがあります。下り坂やひねり動作の時にはっきりします。
不安定感があるまま放っておくを半月板損傷や軟骨損傷などを生じ慢性的は痛みや腫れが出現します。

膝の機能解剖-靭帯 半月板

膝関節(knee joint) は人体で最も大きな関節であり,大腿骨(femur)と脛骨(tibia)の間の大腿脛骨関節(femorotibial joint) (FTJ)、および大腿骨と膝蓋骨の間の膝蓋大腿関節(patellofemoral joint)(PFJ)に関節節を持ち,FTJはさらに内側(medial compartment)と外側(lateral compartment)に分かれています。その適合性は股関節の安定性が関節節の形状によって得られているのとは対照的に、その内的安定性は靭帯、半月板などを中心とした軟部組織によるところが大きいです。
脛骨と大腿骨の前後左右の動きは4本の靭帯により制御されています。大腿骨と脛骨の間には通常の軟骨のほかに内外関節面に各々1つずつ半月板が存在しています。半月板は軟骨同様の弾力性のある組織からできており脛骨の関節面の周囲にあります。半月板はFTjの適合性をよくするとともに関節面にかかる荷重を分散させ過度な圧が関節軟骨にかかることを防いでいます。

変形性膝関節症

症状

膝の痛みと筋肉の萎縮、運動制限、水がたまることです。痛みは動きはじめにでてきて、特に内側に多くみられます。筋肉の萎縮は大腿四頭筋という太ももの筋肉、特に内側の筋肉に見られる場合が多いです。症状が進むと膝が完全に伸びなくなります。またO脚変形が生じます。

  • 初期:立ち上がり、歩きはじめに膝が痛む(休めば痛みがとれる)
  • 中期:歩くと膝が痛み、正座、階段の昇降が困難(動作が不自由)
  • 末期:変形が目立ち、膝がピンと伸びず、歩行も困難(日常生活が不自由)

原因

関節軟骨の老化、老化に伴う姿勢の変化、外傷、肥満、素因(遺伝子)などが考えられます。加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使いすぎによりすり減り、関節が変形します。
変形や痛みは膝にかかる力学的なストレスが原因です。そしてそのストレスは姿勢の変化と体重増加などによって生じます。その他、老化による骨自体の変形や代謝、内分泌も素因となりえます。

検査

問診や診察、特に触診で膝内側の圧痛、動きの制限、腫れ、変形などを調べ、レントゲンを撮影して診断します。必要によりMRIなとの検査も行います。

治療

  • 薬物療法:外用薬(塗布薬や軟膏)、内服薬(消炎鎮痛薬)、関節内注射(ヒアルロン酸など)
  • 理学療法:運動療法、物理療法
  • 装具療法:専用の装具や足底板により適切な身体の使い方を学習できます。
  • 手術療法:関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術など

予防と運動療法

膝の変形は力学的な異常なストレスと筋力低下が原因のひとつです。姿勢が変わると重心の位置が変わりその負担は膝にかかります。姿勢は骨盤や脊柱の筋力低下による姿勢保持機能の低下、と同時に骨盤や脊柱の筋肉やその他の組織の萎縮や短縮による柔軟性の低下によってわるくなります。よって個々によって違いはありますが骨盤、膝関節を中心とした全身的な姿勢筋の筋力強化、柔軟性の獲得が課題となります。
簡単な例として椅子に座って背筋を伸ばした状態で膝をあげる運動や、その状態で膝を伸ばして5秒止める運動、椅子に座った状態で骨盤を起こしたり寝かしたりする運動、仰向けに寝て、肘を床につき頭と上体だけ起こして背骨の上の方だけ曲げる運動などがあります。

日常生活では次のことに注意しましょう

  • 適切で適度な運動を日課とする。
  • 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を強化する。
  • 肥満であれば減量する。
  • 正座をさける。
  • 膝を冷やさない。クーラーなどに注意する。

踵骨棘

踵の骨には足底腱膜、拇趾外転筋、短趾屈筋、足底方形筋などが付着しており、その筋肉の牽引が繰り返し加わるとその起始部において炎症が生じて痛みがでます

症状

  • 歩いている時や立っている時の踵の痛みがあります
  • 男性より女性に多い
  • 外見的にはとくに異常はなく、熱感や腫れるということもあまりありません

診断

レントゲン撮影での画像診断。
画像上変化を認めないこともあり、あくまでも踵の底部の圧痛を確認します。

治療

  • 安静
  • 歩行時、踵をつけないように(免荷歩行)
  • 消炎鎮痛剤
  • 踵をつけないような装具を装着します
  • 手術をすることもあるがほとんどは保存的に治療をすすめていきます

偏平足

足には足部内側の縦アーチと前足部の横アーチがありますが、縦アーチが扁平化したものをいいます。
原因により、

  • 先天性
  • 外傷性
  • 炎症性
  • マヒ性
  • 静力学性

などに分類されます。
90パーセント以上は静力学性偏平足といわれています。
これはどういうことかというと、発育に伴う体重負荷により縦アーチがなくなってしまうものです。
無症状のことが多いのですが、足関節の痛みやタコの形成、指の付け根の痛み、足の疲労感などを伴うこともあります。

治療

基本的に保存療法に(手術をしない)なります。
子供であればよく運動させて、はだしで歩かせ、運動療法を行います。
痛みがあって歩くのに支障がある方は装具療法として、足のアーチをつくるのを助けるアーチサポーターを靴にいれます。
足のアーチがないため、クッションとしての役目がなくなっているので、衝撃吸収パッドを入れます。
アーチ形成のテーピングなどもあります。あとは運動療法を行います。
運動療法はタオルギャザーといって、足の指でタオルを手繰り寄せるたり、持ち上げたりする運動です。

外反母趾(hallux valgus)

症状

足の親指が人差し指のほうに曲がり、付け根の関節の内側が突き出してバニオン(滑液包の腫脹)を形成して痛みます。進行すると親指が人差し指の下に入り、人差し指の下にタコができます。

原因

圧倒的に女性に多く10才代に発症するものと40代の中年期に発症するものとがあり、前者には高頻度の家族内発生が認められます。解剖学的な要因として、扁平足など外反母趾になりやすい特徴があります。外的要因として最も重要なことは履物で先の尖ったハイヒールを履くと、足の甲の親指側の骨が内に反り、親指の付け根より先の指が先細りの閉鎖部分で外反位に強制されます。中年期には体重増加および筋力低下も発症要因になります。

治療

保存的に矯正体操や装具療法を行います。
変形がある程度進行したものでは無効で手術的な治療が必要になります。

予防

親指の付け根はフィットして先はゆったりした履物を選びます。
外反母趾体操―足のじゃんけん体操
両方の親指に輪ゴムをかけて足先を開く体操を行うなどです。

アキレス腱炎

症状

歩行時での踵からアキレス腱にかけての痛み。
アキレス腱自体の炎症やアキレス腱の周りにある筋膜との癒着、アキレス腱の動きを良くするための袋(アキレス腱下滑液包)の炎症などがあります。

原因

アキレス腱自体の柔軟性の低下
負荷の積み重ね:歩行時の異常な動作の繰り返しがアキレス腱にストレスを与え炎症を引き起こします。

治療

テーピング:やわらかいパッドを踵にあてテーピングで固定します。
足底板療法:踵を上げることによってアキレス腱の緊張をとります。